ITO’s FOCUS
歩道のバリアフリー化整備について
歩道のバリアフリー化の指針
歩道は、車いすや杖利用者、高齢者や子どもなど、誰もが通行する空間です。誰もが安心して暮らしやすい環境整備のため、また急速に進む高齢化の観点からも、歩道のバリアフリー化は喫緊の課題となっています。
国土交通省は、平成18年12月に施行された「高齢者、障害者等の移動等の円滑化に関する法律」(通称:「バリアフリー法」)に基づき、「道路移動等円滑化基準」を規定しており、歩道のバリアフリー化整備を進める上での指針となっています。
http://www.mlit.go.jp/road/road/traffic/bf/kijun/kijun.html
(*国土交通省ホームページより バリアフリー法に基づく道路構造基準)
また、これに伴い、基準の運用と解説のための「道路の移動等円滑化整備ガイドライン」が作成されています。
歩道のバリアフリー化の整備手法
歩道のバリアフリー化整備について事例を交えながら解説していきます。
幅員の広い歩道の整備
車いすやベビーカー同士でもすれ違える幅員を確保する必要があります。しかしながら、すでに沿道に建物が立ち並び、用地買収が行えず、幅員の拡幅が困難な場合が多くあります。
そのような場合の整備手法として、水路が一体となった縁石を使用することで、エプロン部(路面排水を流す部分)をなくし、歩道の幅員を拡げることができます。
歩道の勾配の改善、緩和
歩道の勾配を緩和する手法として、マウントアップ歩道のセミフラット化があります。
マウントアップ歩道:縁石の高さと歩道の高さが同じ歩道構造
車両が出入りする車両乗入部や横断歩道との接続部において、歩道の高さを切り下げなければいけないため、勾配が発生します。
いわゆる波打ち歩道が形成され、特に車いすはスムーズに通行ができません。
セミフラット歩道:歩道が車道より高いが縁石の高さよりは低い歩道構造
車両乗入部や横断歩道との接続部においても勾配が発生しないため、歩道の平坦性が確保でき、車いすもスムーズに通行できます。
横断歩道の段差解消
横断歩道との接続部の段差をなくすことで、車いす、ベビーカー、杖利用者、高齢者や体の不自由な方などの転倒を抑制し、スムーズな通行を実現します。
この整備では、転倒の要因となる段差をなくすため、バリアフリー整備に適したスロープ状の縁石が使用されました。この縁石はブロック表面に溝を設けることで、視覚に障害のある方にとっても識別性の高い構造となっています。
さらに、雨天時には集水孔で雨水を内蔵水路に集水することで、水たまりの解消が可能です。
このほかにも、歩道内の無電柱化(電線類の地中化)、舗装面の改良、視覚障がい者誘導用ブロック(点字ブロック)の設置などが挙げられます。
誰もが安全・安心に通行できる歩道にするには
歩道は、高齢者や子ども、体の不自由な方、車いす、ベビーカー、杖利用者など多様な人が通行する空間であることから、誰もが安心して通行できる空間を創出するために、今後も整備が進められていきます。
しかしながら、歩道のバリアフリー化は、これまで紹介したようなハード面での整備だけで完結するものではありません。例えば、歩道上や、点字ブロックの上に駐車された車や自転車は、通行のバリアとなっています。誰もが安全・安心に通行できる歩道にするには、すべての人がお互いの立場に立ってバリアを解消し、行動していくことが大切です。